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わくわく挿絵帖
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もうひとつの世界
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いま世評に高い映画「アバター」を観ました。我が家には妻と3人のこどもがいますが、いずれも映画好きで、全員がこの映画は観たようです。
 
 「アバター」が特定の映画に似ているいうことは公開当初から広く言われていました。面白いのは観るものの世代によって似ているという対象が異なることです。「天空の城ラピュタ」や「もののけ姫」に似ていると言ったり、「ポカホンタス」だ、いや「ターザン」だ。「マトリックス」にも似ているぞ。空を飛ぶところは「ダイノトピア」だと言った具合です。

 ぼくも似ているというものをひとつあげたいと思います。それはエドガー・ライス・バローズの「火星シリーズ」です。この本はぼくが初めて夢中になった長編SF小説です。

 ときは南北戦争直後、場所はアメリカ。主人公のジョン・カーターは元南軍士官です。職を失ったカーターは金鉱をもとめて西武へ渡ります。さて、金鉱を探し当てたのはいいのですが途中、アリゾナの山地でインディアンに襲われます。彼は夜を徹して足場の悪い渓谷を逃げ続け、身も心もボロボロになりながら洞窟に倒れ込むように逃げ込みます。そして、そこで深い眠りに落ちます。眠りから覚めたカーターは驚きます。なんとそこは地球ではなく火星だったのです。

 これがSF小説の古典の名作の出だしです。何とも唐突な話しの持っていき方ですが、これが少年のぼくを夢中にさせました。

 その後カーターは何度か地球に立ち返り、子孫に自分の数奇な運命を語り伝えます。そのときの彼は敗軍の元士官ではなく、絶世の美女である火星のプリンス、デジャー・ソリスを娶り火星の大元帥になっていました。 

 語り終えたカーターは、あの人馬も通わぬアリゾナの洞窟に戻り横たわります。眠りに落ちた後は再度、火星の地で目覚めます。勿論、彼の地では冒険とロマンが待っています。

 ここで肝心なのは、地球より質量の小さい火星においては重力が弱く、地球人の筋力はスーパーマン並になることです。そう、ジョン・カーターは火星の英雄として生きたのです。

 ぼくが「アバター」と似ていると思うところはここです。眠りの果てにもうひとつの世界が開かれ、その世界にこそ解き放たれた本当の自分がいるという思いです。しかも、そこでは自分は英雄として活躍し生きているのです。

 実に男の子らしい夢です。多くの少年たちがこの幻想に取り憑かれます。おそらく、ジェームス・キャメロンもそんな子供のひとりだったのでしょう。そして、その幻想を繰り返すことは創作活動そのものにほかなりません。そうしてみると、映画「アバター」はジェームス・キャメロンの少年時代の自画像なのかもしれないと思うのです。

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by arihideharu | 2010-02-12 19:54 | 映画・演劇 | Comments(0)
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