深夜、「江戸の悪太郎」という古い東映時代劇を見ました。監督はマキノ雅弘、主演は大友柳太朗、1959年度作品です。マキノ雅弘は、ぼくの大好きな監督であり娯楽映画の巨匠です。また、大友柳太朗は生きている「武者絵」といえるほど立派な顔と躰をもった役者で、ぼくが初めてファンになったチャンバラスターです。
見終わってホッとしました。最後までイッキに見た東映時代劇は久しぶりだったからです。
実は東映時代劇はハズレが多いのです。公開当時はドル箱だった作品のなかで、今見ても面白いと思うものは意外と多くありません。ただ、お金の掛かったセットと、いま探してもない日本の風景がフィルムに残っているので出来るだけ見ておこうと考えています。
東映時代劇は大衆演劇に似ています。見る方も作る方も演技や演出といったものに完成度も芸術性も求めない、言わば外連(けれん)の世界です。それはそれで映画の王道かもしれません。
東映には名女優がいないと言われました。チャンバラと外連(けれん)を看板にした映画には女優の名演技はジャマだったのかもしれません。
女優陣には小村雪岱の絵から抜け出たような美しい「千原しのぶ」などもいたのに惜しい限りです。