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わくわく挿絵帖
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映画「ブラック・スワン」
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 総ての芸術は現実を模倣するところから始まります。この模倣力において映画はカメラという機械を手に入れたことによって、他の芸術手段と比較にならない程のアドバンテージを持ちました。そして、ストーリーと音楽が加わります。我々はさらに無防備に映画の中に入り込み、現実との境目をなくしていきます。

 映画「ブラック・スワン」はナタリー・ポートマン演じる若きバレリーナが、初めての大役を目の前にし、そのストレスから現実と自己の幻想世界との境目が分からなくなる恐怖を描いた作品です。

 見どころは、近年のCGや特殊メイクの進歩と演出の妙によって、現実と幻想の境目が消え、我々も主人公と同様の恐怖体験をしていくところにあります。

 そして、もうひとつの見どころは女優ナタリー・ポートマンが物語が進むにつれ、いつの間にかドキュメンタリーを見るように現実の若きバレリーナが世紀のプリマドンナに成長していくのを目撃している気分にさせます。

 以上のように映画「ブラック・スワン」の最大の魅力は、多くの境目が透明化し、なんのストレスもなく彼女の狂気を共有化することにあります。

 この境目の透明化は映画の本質であり、作る上での目標でもあるので、映画「ブラック・スワン」は見事に一直線に成功した最高の作品と思われます。

 しかし、総てがうまくいったと思われるこの作品、どこか腑に落ちないところがあります。おそらく、すべての境目が消えたために見る者の想像力をかき立てたり、感情移入したりという隙間がなくなったせいと思われます。ですから、これ以上の映画はないと思わせる反面、どこか寂しくなる映画でもあります。


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by arihideharu | 2011-06-01 02:54 | 映画・演劇 | Comments(0)
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