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わくわく挿絵帖
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ゴジラの脚
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 ぼくの子供時分のお盆映画というと「ゴジラ」でした。今から考えると、子供の夢を乗せるにしては随分と暴力的な映画で、人間の文明や秩序を破壊して廻るヒーローですから、かなりアナーキーで危険な映画だったことに気がつきます。
 
 見せ場は勿論破壊シーンです。円谷英二の特撮はスローモーションを多用し画面の一枚一枚が耽美的で、見るものに恍惚感を与えました。まるで、破壊する快感と滅び行くカタルシスを子供達に学習させているようでした。そして、それを支えていたのは限りを尽くしたリアリズムでした。

 ところが限界もありました。肝心要のゴジラが小さな子供が見てもすぐ分かるような着ぐるみ…。人が中に入っているのがバレバレで、特に後ろ脚が獣の脚ではなく、歌舞伎に登場する馬の脚と同様で間抜けな膝っ小僧が見えるようでした。

 これでこの映画は作りごとだと鼻っから分かる仕掛けです。なーに浅草奥山の見せ物と変わらぬと固唾をのみながらも、どこかで安心しながら見ていたような気がします。

 その後ハリウッド映画の特撮方ハリーハウゼンが、ゴジラの特撮を「子供だましだ」というようなことを言っているのを聞き、膝を叩きました。

 実はぼくはゴジラより、ほぼ同時期に見たギリシャ神話を題材にしたハリーハウゼン監督の「アルゴ探検隊の大冒険」の方が大っぴらには言いませんでしたが贔屓でした。コマ撮りの怪物の方が合理性があると感じていたからです。
 
 ただ、「どこかで安心しながら見る」というのは娯楽映画の王道だというのも明々白々な事実です。特に子供には必要でした。

 それから数十年経って、スピルバーグによって作られた「ジュラシックパーク」のなかで、原を駆ける恐竜の群れを見たときです。ぼくは嗚咽し涙が止まらなくなりました。何故なら、間抜けな脚を持ったゴジラではなく本物のゴジラがいたからです。人類が初めて恐竜を目撃した瞬間です。

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by arihideharu | 2011-07-08 00:37 | 映画・演劇 | Comments(0)
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