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わくわく挿絵帖
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立ち姿
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 江戸時代は世襲した家業によって社会生活を送ることが多かったので、100メートル先からでも、侍と商人の違いが分かり、また同じ侍でも旗本と田舎侍の違い、商人では大店と小店の主の違いが分かったと思われます。
 基準は、視覚情報として着物や髷・装身具の違い、また立ち振る舞いなどで、耳からは言葉遣いです。
 目からの情報で最も重要なのはおそらく立ち姿で、侍なら武芸の上達度を読み、商人なら懐具合を、職人なら腕の善し悪しを、やくざ者なら度胸の有様を瞬時に検討をつけたことでしょう。
 ある意味、騙り詐欺の類が成立しやすい社会といえるかもしれません。

 話しは変わります。

 松本清張の原作で『かげろう絵図』(1959年公開)という若き市川雷蔵主演の名作があります。
 衣笠貞之介が監督した、美意識の高い作品で、大奥御殿のセットが見事な一本です。
 ストーリーは江戸期最長の権勢を誇った11代将軍家済をたぶらかし、己の野心を成就させようとする側近旗本の悪事に関する推理劇です。

 この映画のすごいところは、50年天下人だった男の姿を、柳永二郎という新派の名優がこともなげに演じ。また、それを騙そうとする優美な悪漢を、滝沢修という歴史的名優がその存在感と芸で自然に演じていることです。

 また同じく松本清張の小説を原作にした『無宿人別帳』(1963年公開)という、傑作時代劇があります。
 大筋は、藤丸かごに乗せられた江戸の悪党たちが流刑地佐渡ヶ島に送られるところから始まり、佐渡での過酷な収監生活を経て、やがて島抜けをするまでの話しです。
 悪党たちを演じるのは佐田啓二・三国連太郎・宮口精二・伴淳三郎・渥美清などです。
 この映画のすごいところは『かげろう絵図』と同じく、原作と脚色のレベルの高さではなく、どの男衆も一人や二人、九寸五分でズブリとやった過去がありそうなことが、立ち姿だけで理解できることです。
by arihideharu | 2015-04-06 16:31 | 映画・演劇 | Comments(0)
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