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わくわく挿絵帖
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『むっつり右門捕物帖』
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 嵐寛十郎でおなじみの町方同心を主人公にすえた、古典的名作『むっつり右門捕物帖』は、原作では時代は江戸初期寛永年間となっています。島原の乱が終わって間もない、まだ宮本武蔵が生きていた時代です。
 ところが、八丁堀の同心という設定も、そもそも八丁堀は埋め立て前で存在せず、小銀杏髷に着流しに巻き羽織で肩で風切る姿は江戸末期の風俗です。
 このあたりのいい加減さは、考証本でNG集の常連として取り上げられてきました。
 そんな事情のせいか、映画やテレビでは元禄期や江戸後期に置き換えられています。
 
 小説を読みつつ、歴史情報を得る喜びを識った読者には不満の多い本です。しかしながら、講談や落語を聞くような、得難い懐かしさがあります。
 また、歌舞伎を観るにつけ、様々な時代の物や事を折衷させ、美を作り上げたワザを目の当たりにすると、佐々木味津三の『むっつり右門捕物帖』はむしろ本道で、映像制作の現場では時代考証が厳格な『半七捕物帖』などより作りやすく、原作としてむしろ優れていたといえるかもしれないと近ごろ思います。
by arihideharu | 2016-02-18 01:37 | 映画・演劇 | Comments(0)
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