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わくわく挿絵帖
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剣客像
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 大昔のスチール写真を観ていて剣戟スターの中で、ぼくが圧倒的に立ち姿がきれいで絵を描くにあたり手本にしたいと思う役者は嵐寛寿郎と月形竜之介です。

 伊藤彦蔵という戦前戦後に活躍した希代の挿し絵画家がいました。
 彼の描く剣客は細身で、どこか上記の二人に似ています。
 また永倉新八という新撰組生き残りの剣客が、老齢になっての写真を残しています。
 痩躯に白い顎鬚をたくわえ凛とした姿で、晩年の嵐寛寿郎を思わせます。まさに剣客像のひな形を見るようです。
 
 実は挿し絵と映画は密接な関係がありました。
 先にあげた伊藤彦蔵は細密なペン画の絵師ですが、この画風は、当時大量に出廻った映画のスチール写真が大いに影響したとぼくは考えています。
 
 映画は変遷していきます。戦後になり黒澤明と三船敏郎のコンビが登場しチャンバラ映画が塗り替えられ剣客像が変わります。
 細身から大分マッチョになり剛剣のイメージになります。
 この変化に敏感に反応したのは、黎明期のレンタル漫画(貸し本)です。
 バタ臭い顔に長いもみ上げとボサボサ頭、三船敏郎の顔が浮かびます。そして黒澤映画独特の豪快なスピード感のある殺陣が同様に繰り広げられ、血しぶきを上げます。
 漫画はどんどん写実を追求し劇画と呼ばれるようになっていき、端正な剣客像からハードボイルドな剣客像に移っていきます。

 しかしながら黒澤映画を良く観ていくと、三船敏郎の殺陣は嵐勘十郎と同様に姿勢が常に垂直で乱れず、実は大いに端正であることが分かります。
 その後この剣客像はボリボリ頭をかき、すぐに胡座をかき酒をねだる、行儀の悪さだけが強調され本来の折り目の正しさが抜けていきます。
 

by arihideharu | 2017-10-01 15:58 | 挿絵 | Comments(0)
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