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わくわく挿絵帖
sashieari.exblog.jp
カテゴリ:映画・演劇( 42 )
もうひとつの世界
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いま世評に高い映画「アバター」を観ました。我が家には妻と3人のこどもがいますが、いずれも映画好きで、全員がこの映画は観たようです。
 
 「アバター」が特定の映画に似ているいうことは公開当初から広く言われていました。面白いのは観るものの世代によって似ているという対象が異なることです。「天空の城ラピュタ」や「もののけ姫」に似ていると言ったり、「ポカホンタス」だ、いや「ターザン」だ。「マトリックス」にも似ているぞ。空を飛ぶところは「ダイノトピア」だと言った具合です。

 ぼくも似ているというものをひとつあげたいと思います。それはエドガー・ライス・バローズの「火星シリーズ」です。この本はぼくが初めて夢中になった長編SF小説です。

 ときは南北戦争直後、場所はアメリカ。主人公のジョン・カーターは元南軍士官です。職を失ったカーターは金鉱をもとめて西武へ渡ります。さて、金鉱を探し当てたのはいいのですが途中、アリゾナの山地でインディアンに襲われます。彼は夜を徹して足場の悪い渓谷を逃げ続け、身も心もボロボロになりながら洞窟に倒れ込むように逃げ込みます。そして、そこで深い眠りに落ちます。眠りから覚めたカーターは驚きます。なんとそこは地球ではなく火星だったのです。

 これがSF小説の古典の名作の出だしです。何とも唐突な話しの持っていき方ですが、これが少年のぼくを夢中にさせました。

 その後カーターは何度か地球に立ち返り、子孫に自分の数奇な運命を語り伝えます。そのときの彼は敗軍の元士官ではなく、絶世の美女である火星のプリンス、デジャー・ソリスを娶り火星の大元帥になっていました。 

 語り終えたカーターは、あの人馬も通わぬアリゾナの洞窟に戻り横たわります。眠りに落ちた後は再度、火星の地で目覚めます。勿論、彼の地では冒険とロマンが待っています。

 ここで肝心なのは、地球より質量の小さい火星においては重力が弱く、地球人の筋力はスーパーマン並になることです。そう、ジョン・カーターは火星の英雄として生きたのです。

 ぼくが「アバター」と似ていると思うところはここです。眠りの果てにもうひとつの世界が開かれ、その世界にこそ解き放たれた本当の自分がいるという思いです。しかも、そこでは自分は英雄として活躍し生きているのです。

 実に男の子らしい夢です。多くの少年たちがこの幻想に取り憑かれます。おそらく、ジェームス・キャメロンもそんな子供のひとりだったのでしょう。そして、その幻想を繰り返すことは創作活動そのものにほかなりません。そうしてみると、映画「アバター」はジェームス・キャメロンの少年時代の自画像なのかもしれないと思うのです。

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by arihideharu | 2010-02-12 19:54 | 映画・演劇 | Comments(0)
 女優、森光子のいとこの話。

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 女優の森光子さんが昨年、国民栄誉賞を受賞したのにともなって、テレビでインタビューを受ける機会が増えたように思います。それで思い出すことがあります。受賞直後のことです、こういうことが繰り返されていました。

 「女優になったきっかけは?」と問われると、森さんは「従兄に嵐寛寿郎という映画俳優がいまして…。」と答えます。するとそこに一瞬の間が生まれます。「嵐寛さんですネ。」と合いの手を入れるのはまれで、大概は「それで?」という顔で話の先を進めます。

 勿論、ぼくはそこで拍子抜けです。嵐寛寿郎といえば、かつては誰もが知っているチャンバラ映画の大スターです。実はぼくの最も好きな剣劇俳優でもあります。拍子抜けの意味はそこにあります。

 多くの剣劇俳優の中でも嵐寛寿郎ほど立ち姿の美しい役者はいませんでした。正眼に構えたときは勿論、困難な体勢から突きや胴をきめるときでも、背筋がピンと伸び、着物の裾が乱れませんでした。そして、乱れなかったのは着物ばかりではありません、顔がそうです。どんな場面でも破綻の表情を見せませんでした。

 無声映画時代のチャンバラヒーローの多くは無頼漢でした。無頼漢は顔を歪めながら死んでいきます。坂東妻三郎や大河内伝次郎の役柄です。いわゆる悲壮美です。

 嵐寛は鞍馬天狗を演じました。これは革命家でした。右門捕物帖では町方同心、これは刑事です。いずれも正義の人です。

 戦後、老いても多くの映画に登場しました。あるときは南の島で半裸で三線を弾き、またあるときは北の果ての刑務所で素っ裸で博徒のなかに混じって喧嘩をしていました。老残の姿です。しかし、いずれも輪廻転生した鞍馬天狗の勇姿でした。

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by arihideharu | 2010-01-14 02:10 | 映画・演劇 | Comments(0)