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わくわく挿絵帖
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丘に上がった船乗り
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 毎日新聞の連載小説「四十八人目の忠臣」が5月で終わり、また赤旗日曜版の「蕣花咲く」も今月で終了しました。ふたつとも約一年間の連載でした。拙い絵でしたが、ご購読の皆様有り難うございました。

 毎日一枚挿絵を描くペースから解放された訳ですが、今でも虚脱感のようなものが残っていて、躰が宙に少し浮いている感じるがあります。例えるなら丘に上がった船乗り、地に足がつかない感じです。ただ、今はこの浮遊感を少しだけ楽しもうかと考えています。

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by arihideharu | 2011-06-26 15:39 | 挿絵 | Comments(0)
斜視
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 今では子供もが3人いるので、入学式や卒業式・PTAと学校へ行くことがあります。その都度ぼくは、学校との相性が悪かったことを思い出します。セレモニーでの校長先生などのお話しを聞いているとき失礼なことですが、どんなに集中しようとしても眠くなってしまいます。

 子供のころを思い出すと、ぼくはおそらく今で言う学習障害で、読むことと書くことが鬼のように出来ませんでした。おまけにじっと座っていられなくって、小学生のときは良く注意されました。それに加え、黒板を良く見ようとすると眼球が内側に寄ってきました。いわゆる斜視です。

 今ではあまり見かけなくなった障害です。おそらく治療法が確立されたのでしょう。昔は良く見かけました。

 中学生のときです。空き時間に大勢で体育館で遊んでいました。その多くは鬼ごっこのようなことをしてかなり盛り上がっていました。そのとき突然、停止せよの号令が響きます。壮年の同学年他クラス担任の男教師の声です。

 我々は並ばされて叱られることになりました。理由は昔のことで忘れてしまいましたが、やってはいけない時間帯だったとか、危険行為があったとかそういうことだったと思います。

 ぼくは叱られる準備、すなわち先生の顔を注視しました。すると右目が内側に強く寄ってくるのが分かります。像が二重に見えてくるのです。ぼくは眼球をコントロールしようとしました。

 その時です。

 「どこを見ているんだ!」

 鬼の形相で鉄拳が飛んできました。

 彼はカリスマ性のある、生徒にも父兄にも人気のある颯爽とした先生でした。

 ぼくは呆然と立ちすくみながら、傷ついた心で「所詮、教師の正義など、こんなものだ」このことは一生忘れないだろうなと考えていました。

 その後ぼくは、人の顔をしっかり見て話しをすることの出来ない若者になっていきました。勿論、女の子にニッコリ笑って話し掛けるなど論外でした。


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by arihideharu | 2011-06-09 17:22 | 思い出 | Comments(1)
映画「ブラック・スワン」
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 総ての芸術は現実を模倣するところから始まります。この模倣力において映画はカメラという機械を手に入れたことによって、他の芸術手段と比較にならない程のアドバンテージを持ちました。そして、ストーリーと音楽が加わります。我々はさらに無防備に映画の中に入り込み、現実との境目をなくしていきます。

 映画「ブラック・スワン」はナタリー・ポートマン演じる若きバレリーナが、初めての大役を目の前にし、そのストレスから現実と自己の幻想世界との境目が分からなくなる恐怖を描いた作品です。

 見どころは、近年のCGや特殊メイクの進歩と演出の妙によって、現実と幻想の境目が消え、我々も主人公と同様の恐怖体験をしていくところにあります。

 そして、もうひとつの見どころは女優ナタリー・ポートマンが物語が進むにつれ、いつの間にかドキュメンタリーを見るように現実の若きバレリーナが世紀のプリマドンナに成長していくのを目撃している気分にさせます。

 以上のように映画「ブラック・スワン」の最大の魅力は、多くの境目が透明化し、なんのストレスもなく彼女の狂気を共有化することにあります。

 この境目の透明化は映画の本質であり、作る上での目標でもあるので、映画「ブラック・スワン」は見事に一直線に成功した最高の作品と思われます。

 しかし、総てがうまくいったと思われるこの作品、どこか腑に落ちないところがあります。おそらく、すべての境目が消えたために見る者の想像力をかき立てたり、感情移入したりという隙間がなくなったせいと思われます。ですから、これ以上の映画はないと思わせる反面、どこか寂しくなる映画でもあります。


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by arihideharu | 2011-06-01 02:54 | 映画・演劇 | Comments(0)