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わくわく挿絵帖
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「芳年展」
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 月岡芳年の作品を年代を追って観ていくと、ぼくらの知っている芳年調がより顕著になるのは明治の新政が開始してから10年20年と経ってからです。皮肉なもので、江戸文化を代表する「錦絵」は既にない江戸の風物を芳年一派がノスタルジーを込めて描いたとき、絢爛たる最後の華が咲き誇ります。
 この美しさは、アニメ「平成狸合戦ぽんぽこ」において、現代文明の中で滅びつつあるタヌキが「バケガク」の秘術を尽くし、滅んでしまった古里の山河や妖怪たちを蘇らせたときのような白昼夢を見るようです。思えばあれは、昭和日本のアニメーターの矜持でした。
 同じように明治20年前後、芳年たちはすでにない江戸を秘術を尽くし木版画などで蘇らせます。これは江戸町絵師の矜持と思われます。
 浮世絵はこの世の出来事を活写するのが最大のミッションのはずが、いつのまにか幻を描くことになります。
 
 絵描きは幻を描くとき、耽美的になります。芳年の場合それが特に顕著でした。彼は晩年、神代から始まる日本の歴史を絵にし、傑作を次々に生み出します。ぼくらがよく知っている装飾性と官能美が溢れるロマン主義の世界です。それはあたかもビクトリア王朝に登場した歴史物語に題材を求めたラファエロ前派の絵を思い出させます。芳年は浮世絵の世界を超え、より大掛かりな幻を描いていったのです。これは明治の新政が落ち着き、あるいは不満が渦巻いていたためか復古趣味の萌芽で、昭和の画学生なら誰もが好きな青木繁などの魁となったと思われます。

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by arihideharu | 2012-11-10 19:03 | | Comments(0)