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わくわく挿絵帖
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桂離宮
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 桂離宮を観るのが長年の願いでした。それが今年、早々に参観希望のハガキを出し、願いかない、今回の京都旅行の柱にすることが出来ました。
 
 ぼくたち夫婦は台風一過の強い陽射しのなか、桂駅からゆるゆると歩き離宮へ向かいました。
 市街地に挟まれた桂離宮の囲いと桂川の眺望に、幸い迷うこともなく着きました。
 強暴だった台風18号の影響で、川景色は荒れています。しかし、泥をかぶってなぎ倒されたすすきの原は、真夏にもどった午後の陽を受け、土手の方からすでに若々しい草原の様子を見せ始め、十五夜の月の出を待っているようです。
 ぼくらは参観開始までずいぶん間があったので、月見団子を買う客で繁盛している菓子屋で、薄茶と評判の菓子をもらうことにしました。そこは桂橋の袂にあり桂離宮を目の前にする和菓子屋です。
 
 いよいよ開始5分前、受付をすませ待合室に入りました。20名ほどの参観者がすでに待機しています。ぼくは深呼吸をしてスタート待ちます。
 中年男性が登場しました。ガイドのようです。初めての展開です。いままで名苑とよばれるところで事前の解説はあっても、ガイドが同行する経験はありません。ぼくは少々うろたえました。
 
 そもそもぼくがお庭に興味を持ち始めたのは、高校の修学旅行で西芳寺を観てからです。季節は秋、色づいた木々と苔の青、ぼくは絢爛たる襖絵の中を歩いているような恍惚感とともに、あまりの美しさに衝撃を覚えました。
 その後学習の中で、天下の名苑は西芳寺とともに桂離宮が白眉と識りましたが観る機会を得ないままでした。
 つまりぼくは長い間、桂離宮を散策するのを夢想していたのです。もちろんその夢想は静寂の中です。
 
 ガイドの第一声です。「あっあー!」ぼくは耳をふさぎたくなりました。香具師のような大音声です。
 ぼくは思わず出口を目で追いました。そのまま帰ろうと思ったのです。
 そのとき、お庭の一部が目の端に映りました。
 「美しい!」
 ぼくは、しばし我慢をして観ることにしました。

 一時間半後、ぼくは噂にたがわずパーフェクトな美しさを観て興奮していました。

 岡本太郎がかつて桂離宮を観て、「池にサメでも放したら、面白かろう」と言ったのは、この庭園の尋常ならざる美しさに半ば嫉妬したと思われます。あるいは、どんな異形がじゃましようと、完全な美をもったものは、そのパワーを失うことがないことを彼は逆説的に言ったのかもしれません。

 とはいうものの、長年の願望であった桂離宮参観が、人喰いサメならぬノイズという異形との道行きとなり、なにやら矛盾する命題と戦いながら観ているようで、感動しつつもやはり相当残念でした。
by arihideharu | 2013-09-30 18:46 | 旅行 | Comments(0)