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わくわく挿絵帖
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江戸初期の廻り方同心の格好(映画「浪人街」続き)
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 映画「浪人街」には、時代設定を江戸初期としているため、珍しい風俗が出てきます。

 そのひとつは女性の髪型です。 
 後世見る島田・勝山系の髷は珍しく、長い黒髪を輪を作って背中で結わえる玉結びか、頭のてっぺんで結わえる唐輪髷で、基本がまだ下げ髪ままです。これらはおそらく有史以来あるシンプルな髪型です。
 また衣装の方も帯は細く、腰に簡単に結んでいます。
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 さらに珍しいものが出てきます。それは風紀を取り締まる廻り方同心の格好です。
 まるで、大名家の門番のようです。すなわち、粗末な袴に両刀を差し、六尺棒を抱えているのです。
 当時の門前町は、寺社奉行の係りですから、これら役人は、当番の大名家の軽輩の務めとなります。
 身分は足軽(同心と同義)、つまり門番と同格の者たちです。風体が似ているのはそのせいです。
 彼らは、正確には侍身分ではありません。
 おそらく江戸初期の繁華街は風紀が相当悪く、戦で死ぬならともかく、正規雇用の侍たちは勿論、侍であることを自負する浪人たちも、やりたくない仕事だったと考えられます。
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 代表する盛り場の多くは社寺門前にありますから、そこで取り締まりは寺社奉行となった譜代大名家の雑兵の出番となったのでしょう。
 まだ軍政下の時代でした。 
 ちなみに、この足軽同心たちは江戸期を通じ、中世以来の臨時雇用の形態のままで、御維新になっても、当初士族の扱いを受けませんでした。

 映画『浪人街』はこの事情から、寺社方の同心たちの非力を強調し滑稽化しています。間違いなく馬鹿にしています。
 しかしながら、槍の代替品である樫材の6尺棒を振り廻されては、腕自慢の侍もてこずったはずです。

 それはさておき、この映画の類推からも、当時の町奉行所の同心も、着流しに巻き羽織ではなく、六尺棒を抱えた門番のような格好だったと考えられます。
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# by arihideharu | 2016-01-31 17:23 | 映画・演劇 | Comments(0)
新聞連載小説『うめ婆行状記』始まりました。
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 がん闘病の末、去る11月7日に他界されました、宇江佐真理さんの遺作『うめ婆行状記』が1月12日より朝日新聞夕刊でいよいよスタートいたしました。
 
 一時は完成も危ぶまれたそうですが、お亡くなりになる二日前に病床にて渾身の力を振り絞り脱稿し、ご家族に託されたそうです。
 壮絶というしかありません。

 当初は、今年の6月からの通常連載という形を予定していたようですが、急きょ短期連載という形になりました。
 
 ご冥福を祈りつつ、一生懸命描かせていただきたいと存じます。合掌。
# by arihideharu | 2016-01-13 14:20 | 挿絵 | Comments(0)
映画の中の居酒屋
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(前回、眠狂四郎/勝負の続き) 
 入って飲んでみたいと思わせる映画の中の居酒屋が、もうひとつあります。
 ご存じ「浪人街」(マキノ雅弘監督・1957年)の中です。
 
 それは大きな門前町内にあり、時代設定は江戸前期、慶安の頃と思われます。
 盛り場は戦国の風を未だ残した浪人たちと、おごり始めた幕臣の小倅たちのたまり場と化し、両派の小競り合いが絶えない雑多な世界が広がっています。
 
 店の作りが大いに変わっています。店内の床が石段になっており、奥に向かって、ゆるやかな下り坂になっているのです。
 町場の社寺が窪地や小山にあることを思えば、この居酒屋のセットは絶妙というしかありません。
 そして、店内の壁3面は棚で覆われ、下りものと分かる酒樽がずらりと並べられています。
 小金を握った浪人たちは堀部安衛兵のように升酒をあおり、丸橋忠弥のごとく酒におぼれ、店奥の谷底でトグロを巻きます。
 ここはおそらく、お酒の神様が棲む処なのでしょう。
 酔いつぶれた客の夢枕には観音様が立つらしく、恐ろしい顔のウワバミも実に幸せそうな笑みを浮かべ眠るのです。
# by arihideharu | 2016-01-08 19:17 | 映画・演劇 | Comments(0)
佳き年でありますようお祈り申し上げます。
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明けましておめでとうございます。
新年も佳き年でありますようお祈り申し上げます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
# by arihideharu | 2016-01-01 21:24 | Comments(0)
『眠狂四郎 勝負』
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 市川雷蔵の『眠狂四郎』シリーズに『勝負』(1964年)という三隅研次監督作品があります。ぼくが繰り返して観る映画のひとつです。
 この映画には食にまつわる、大好きなシーンがふたつあります。
 
 ひとつめは季節は正月。場所は夜更けの日本堤。狂四郎の巣のある吉原裏の常閑寺へ向かう土手道です。この一本道にぽつんと夜鷹蕎麦の灯りが浮かびます。
 寒空に澄みきった売り声が響きます。店の前に立つ、綿入れを着た少女(高田美和)の声です。
 ここは狂四郎行きつけの屋台。確かな味と少女の屈託のない笑顔が彼を迎えます。
 寒気の中、作りたての蕎麦やうどんは胃袋をつかみます。
 このときばかりは人斬り狂四郎にも幸せそうな笑みが浮かびます。
 日本堤は吉原通いの道。極楽と地獄が交錯する江戸の果てです。

 ふたつ目は居酒屋の場です。通りには三面大黒天の提灯が下がっていますから、下谷あたりの門前町が狂四郎行きつけの盛り場だということがうかがえます。
 店は角地にあり、通りに面した二面が腰高障子になっています。
 松の内ですから、あたりはにぎわい、店は新年らしく隅々まで磨きあげられ清々しい佇まいです。
 特に表の看板障子は張り替え間もない真っ白な障子に、二面わたり屋号が鮮やかに墨書され、あたかも書道会場に迷い込んだようです。

 おそらくこの居酒屋はぼくの知る限り、映画のセットで最も美しい小店で、入って飲んでみたいと思う筆頭の店です。
 また、この店の土間に飯台を置かず長床机に酒や肴を置くスタイルは、映画ではめったに観ることのない時代考証的に正しい居酒屋の姿を現し、しかもそれを美しく今に再構築して見せています。

 この頃の時代劇の名作といわれるものはどれも美意識が高く、我々がやっとたどり着いた美を、やすやすと手中におさめ日常化しています。
 嫉妬とするところです。
# by arihideharu | 2015-12-26 11:39 | 映画・演劇 | Comments(0)