ぼくが映画雑誌を愛読していたころ、時々チャンバラスター殺陣上手ランキングという企画をやっていたました。すると決まって、阪東妻三郎や大河内伝治郎をおさえ1位は三船敏郎でした。ほとんどが戦後育ちの評論家や映画人が投票するのですから当然の結果といえました。
そのランキングでいつも上位に顔を出す役者で、ぼくにとって意外な役者が一人いました。近衛十四郎です。ぼくはその度に(?)でした。
というのは、ぼくは近衛十四郎の映画を見たことがなかったからです。あの有名なテレビ時代劇「素浪人 月影兵庫」もあまり見た覚えがありませんでした。
その後も近衛十四郎主演の映画やテレビ作品をきっちり見る機会がありませんでした。
そして数年前、作家の宮本昌孝さんと会食した際、この話題がでました。氏もまた近衛十四郎の殺陣を絶賛するひとりでした。勿論、その時もぼくは(?)でした。
これはこういうことに似ています。いくら「イチロー」のバッティングが素晴らしいから見ろと言われても、その時のマリナーズの試合っぷりが面白くなければ「イチロー」の打席を熱をもって見ることは出来ません。
実は、ぼくは何度となく近衛十四郎主演の映画を見ようとしましたが、残念ながら面白い映画にあたらず途中で見るのを放棄していました。
しかし、やっと面白い映画に当たりました。たまたま見た、監督・山内鉄也、脚本・高田宏治 「忍者狩り」です。これは素晴らしいチャンバラ映画でした。
さて、肝心の殺陣ですが、確かに上手です。多分、系統からいったら「三船敏郎型」です。そして映画は「黒澤明型」でした。
ぼくには近衛十四郎の殺陣を見るたのしみが残っているようです。