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わくわく挿絵帖
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八丁堀の旦那
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 岡本綺堂の「風俗 江戸東京物語」を読んでいて二つほど発見がありました。いずれも、八丁堀の旦那(同心)をめぐる話です。

 江戸町奉行所の廻り方同心が市中を巡回する様子は、裾(すそ)を短めにした黄八丈の着流しに黒紋付の巻き羽織、刀は閂(かんぬき)差しに…。というのが一般的イメージです。この風俗を岡本綺堂は芝居では確かにそうなっているが実際は「大抵の同心は縮緬の着物を引摺るるように丈長にぞろりと着て、大小は落とし差しにしていたものです」と書いています。そうすると藤田まこと演じる中村主水のいで立ちは、差し詰め昔気質の野暮天の旦那というところになります。

 あと一つは、廻り方同心が従える中間についてです。三田村鳶魚は木刀一本だけ差した中間は奉行所のもので、御用箱を背負ったものは同心の供と書いています。この御用箱を背負ったものを綺堂先生は八丁堀の折助と呼んでいます。折助とは中間の一般的呼び名だそうで、いかにも江戸っ子が言いそうな歯切れの良い響きです。この折助、いざというときは捕り物にも加わったようです。三田村鳶魚はこういう小者が廻り方同心の家には常に二三人はうろうろして下男働きをしながら捕り縄などの稽古をしていたと言っています。この連中いずれは岡っ引きの大親分にでもなるつもりだったのでしょう。

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by arihideharu | 2010-11-30 02:34 | 挿絵
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