(前回座蒲団続き)時代考証的いい加減さなら、ぼくもちょくちょくやっています。
例えば忍者の背負う刀の位置です。
時代考証家の名和弓雄さんは、刀を背負う場合、柄が左肩にくるのが正しいと書いています。
子供のころ毎日忍者ごっこをした身のぼくにしてみれば、この一文を目にしたとき、相当ショックを受けました。早速試してみたのは勿論です。まだ若かったころです。
まず左肩に背負い抜いてみました。楽にあっさり抜けます。これには相当驚きました。ただ、腕が顔をジャマする欠点があります。
次に右肩に背負い抜いてみます。これには少しこつがあります。それは左手で鞘を持ち、抜くと同時に下へ引いてやるのです。
この方法は佐々木小次郎のような物干し竿は難しいとしても、そこそこの長さの刀ならさっと抜けます。
この一文を書くにあたり、久しぶりにやってみました。ところが、不覚にも躰が堅くなり、腕が背中に回りません。したがって、実証できませんでした。
ただ、ぼくのチャンバラごっこの経験から、刀を背おった場合、抜くことが出来ても、丹下左膳同様、納めることがなかなか出来ません。しかも動き回るに、しごくジャマです。
床下や天井裏に潜り込むには、躰との一体感がありません。
チャンバラ小僧の立場からいえば、白土三平のカムイ式に小太刀を帯の後ろに指すのが一番合理的だったと思います。
実は、このことは名和さんも指摘しています。
つまり忍者は刀を背中ではなく腰に指し、時に応じ差し位置を変えていたというのです。
したがってぼくの結論では、忍者が刀を背負う姿はフィクションで、右肩でも左肩でもどちらでもイイと思っています。