ぼくは密かに、昭和の一家団欒をあらわす円いちゃぶ台は、映像世界が作りだしたフィクションではないかと疑っています。
確かに小津映画は勿論、記録映像にも散見出来るので、戦前戦後使われていたのは間違いありません。
理由はいくつかあります。
高校生の頃、美術部の部室に直径70センチ前後の骨董に属する円いテーブルがありました。
白い布をしき、花を生けた花瓶やリンゴを置くと、セザンヌのモチーフのようになり、部員のお気に入りでしたが、いざお茶や弁当に使おうとすると、見た目より狭く、えらく使い勝手が悪かった思い出があります。
また40数年前上京したとき、勉強机代わりのちゃぶ台を買おうと近所の商店街をあたったときの記憶では、方形のちゃぶ台は合板のものなら、中古なら数百円からあり、選び放題でした。それに比べ、円形は値段の桁がまるでちがっていました。
そして一番の理由は、子供のとき、あまり見ることがなかったからです。
ぼくの出身の秋田ではちゃぶ台とは言わず、飯台と呼ばれ、大家族中心社会だったので、大きなものがどこの家でも置かれていました。
しかしそれは方形で、円いちゃぶ台はやたらに見かけるものではありませんでした。
つまり、ちゃぶ台はコストパフォーマンスにすぐれた方形が主流で、円形が映像世界で多用されるのは、ちょっと洒落た感じに映るせいではないかと推察しています。